コラム
メカ設計者は、人間で例えるならば「筋肉」や「骨格」を担う部分です。メカ設計者は形あるものを作ることが役割となります。
金属やプラスチックなど世の中にある様々な材料の選定だけでなく、切削加工、樹脂成形、あるいは板金プレスなど、さまざまな材料加工方法についても選択することが求められます。
また、単にものを組み立てるではなく、製品として、部品1つ1つを組み合わせた結果、製品の機能を実現することが重要となります。
例えばアクチュエーターやリンク機構など「動きもの」がある場合には、その動く構造というものを考えることがメカ設計者には求められています。
メカ設計者には大きく4つのスキルが求められます。
どのような課題を持っているのか?どのようなニーズがあるのか?
顧客から言われたことだけでなく、顧客やマーケットや世間の状態から自ら考え、潜在的なニーズをつかむことも重要です。
また、ユーザーが製品を使うにあたって、壊れにくい設計にすること、暑いところや寒いところなど様々な環境下でも安定稼働できるといった、仕様書として記載されないところもユーザーの利用シーンを考えて、適切な仕様を考えられる力が必要となります。
要求や仕様を理解できたとしても、それを実現するためにどういった構造、仕組みを製品に持たせるか、アイディアがないと何も始まらないので、それを生み出せる力が必要になります。
ある機能を実現する為に、あるスペックのモーターを使い、このように配線をし、モーターの回転を、このような構造で伝える。
そのような具体的な構造を考え、実現化することが出来るスキルが必要です。
設計しただけではお客様には届きません。設計後の試作や評価では様々な問題が出てきます。
自分の想定と異なる部分、想定外の部分がたくさん出てくる為、その中で修正、変更、解決できるようなスキルがメカ設計者には求められます。
自分で学ぶ方法としては書籍、Webが有効です。Web上には様々な知識が転がっていますので、自分が知りたいことを検索して取得することはオススメです。
最近ではWeb上での動画も有効です。特にメカ設計者として、材料を加工する製造方法(切削や成形等)などの「動くもの」を理解する、仕組みを理解する際に動画は有効です。
ただし、メカ設計者としては、ものを扱うという仕事がかなりのウエイトを占めるので、物理的な要素を感じ取ったり把握したりすることが重要になります。
たとえば、手でものを触ったときの感触や重さ、ボタンであればボタンを押した時の感触などです。
あとは、動くものであれば、その時の摩擦力や動作、力を加えた時に、たわんだりする、その変化量などです。そういったものは、書籍や動画では感じることはできません。
このような感覚的なものを身につけているとつけていないのでは、メカ設計者としての考える力、判断する力っていうのは大きく変わってきます。
やはり「ものづくりが好きな人」というのが第一です。そして好奇心が旺盛な人や、アイディアを出さなければいけないので、常に考え抜ける人、そういった人が向いています。
そして、様々な問題が出てきた際に根気強く解決しなくてはなりませんので、「胆力」のある人です。そして粘り強く、問題が解決するまで続けられる人に向いています。
入社後にメカ設計者になると、最初は製品の一部分を任されて、設計というものを覚えながら仕事を進めていく形になります。
徐々にスキルがついてくると、いろんなことができてくるので、一つの製品を任される場合も、その範囲が広がっていきます。
経験を積んでくると、今度は製品全体を取りまとめる役割を任されたりします。
あるいは、例えば発想力の高い人、より好奇心が強くてどんどん新しいものを作れる人は、既存の製品設計の前の段階で、新しい技術を生み出したりするようなセクションに異動することもあります。
ベテランになってくると、応用力が向上しますので、一つの製品ではなく会社の中の様々な製品を横断的に、アドバイザー的な仕事を担ったりすることもあります。
現在は多くの製品がワイヤレス化してきています。通信を使って機器を制御したり、色々な物を動かしたりできるようになりました。以前はケーブルやハーネスなど、いわゆる有線だったものが、無線中心になってきています。
その最たるものはスマートフォンですが、今はオーディオ機器も、BluetoothやWi-Fiを使って制御できます。家の鍵も物理的な鍵ではなく、通信で行うものも出てきています。
このように電波が使われる機会が増えているので、電波を妨げないような材料、構造などの知識やスキルを有することが、メカ設計者にとっては必要になってきています。
例えば、水が含まれてしまうと、電波の伝送速度に影響を受けるので、吸水率が低い材料を探す必要がありますが、実は既に電波に対して有利な材料をメーカーが開発しています。
ですので、メカ設計者としては積極的に新しい材料を入手しつつ、そういった製品の設計ができるような知識・スキルを身につけていく必要があります。
更にセンシングも近年は増えてきています。
色々なものを測定する際に、カメラモジュール、画像センサーともいいますが、カメラを使って測定したり、最近では触れずに人の目の動きをカメラで捉えて操作するものも出てきています。
また、スマートフォンでは強化ガラスによってディスプレイが年々薄くなってきており、薄型化や小型化に貢献してます。もっと身近なもので言うと、駅のホームドアなんかにもガラスが使われています。こちらも強化ガラスによって数年前よりかなり薄くできています。それによって軽量化して、構造も非常に有利に作れるようになってきました。
これらガラスやカメラに共通して言えることは、光の設計です。こういった点を理解しておくこともメカ設計者としては今後求められてきています。
ゼロから設計シリーズでは、できるだけ「もの」を触っていただく。
あるいは、現場に行っていただく。それからトレーニング、研修の中でも、実際の「もの」を使いながら、設計のあらゆるシーンを想定したお題を出します。
複数人数で協議しながら、自分の考えだけでなく、他人の考えも合わせて、その設計の考え方と知識を身につけていくことが可能です。
最初に知識を蓄える。そして、知識を蓄えるだけでは設計できないので、設計の考え方や判断の仕方をトレーニングの中で、実際の「もの」を使いながら進めます。
研修はメンバーと一緒に会話をしながら、より多くの気づきを得て、考え方や判断の仕方を身につけていきます。
その為、ゼロから設計シリーズでは実際の「もの」を通じて実践力を鍛えられる研修になっています。
日刊工業新聞社
⇒各種製造方法には、加工や加工機の原理があり、それを理解することが作り易い部品を設計できることに繋がります。本書はその原理を分かりやすく伝えられています。このような原理が理解できる書籍はオススメです。
日刊工業新聞社
⇒図面上に寸法や幾何公差を記載する際、測定できないものを記載しても意味がありません。よって、どのように測定をするかを想定して寸法や幾何公差を記入することが必要です。本書は、幾何公差の測定方法を写真付きで詳細に記載されており、図面を作成する方にはオススメです。